雪男純情秘話

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真奈は年の離れた兄がいた。 あまり仲良くはなかった。 真奈は経済的に貧しい家に育った。 それが不満だった。 おやつは二人で半分ずつ。 「俺のぶんも食べていいぞ」 そんなことを兄が言う、些細なみじめさを抱えたまま成長した。 真奈は進学高校に行きたかった。 しかし兄の大学受験が控えていた。 そこで真奈は考えた。 兄がいなくなれば学費が自分のほうに回るのでは?と。 ある冬の雪の積もった日。 真奈は兄を連れて山を登った。 「落とし穴作ろうよ、お母さんを連れて来て落とすの」 「くだらない」 と、あっさりと言われ、真奈は持ってきていたシャベルで兄を殴った。 元からそのつもりだった。 真奈は殴り続けた。 飛ぶ血潮と降る雪が混ざり合った。 それから真奈は穴を掘った。 雪の積もった地面の土が見えてくるほど、深く深く掘った。 激しい雪よりも激しい汗をかき、身体を熱をもつほどに。 そこに兄を埋めた。 兄は失踪扱いされた。 真奈は私立の進学校を受験できた。
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