序章 ヴォルデーオ王国の暗殺者が二人

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 酒を呑みながら、リータは思ったが口には出さない。 「もう一杯くれる?」  リータは空いた木の杯を差し出す。 「俺ももらおうか。……酔い潰れたことは?」  その言葉を受けてリータが笑う。 「ないわよ、酒に呑まれるのは嫌なの」 「そうか。それには俺も同意する」  話をしながら、二人は酒を呑む。  店の中には、酔っぱらいが大勢いて、どんちゃん騒ぎをしている者も多い。その様子を見たサルヴァとリータは、顔をしかめる。  自分達のことしか考えていないのがよく分かる。面倒なので、騒ぎを止めたりはしない。  騒いでいた男達が、上機嫌で出ていった。 「うるさかったみたいですみませんね」  酒場の主が申しわけなさそうに苦笑する。 「仕方ない」 「まだ、トラブルにならないだけましよ」  その言葉を受けて、サルヴァとリータが苦笑する。      サルヴァが口を開こうとした瞬間、酒場のドアが激しい音を立てて開いた。 「だだだ、誰か! 殺し合いを始めた奴らを、止めてくれええ!」 「お前もこい。……場所は?」  サルヴァはコインをテーブルに置き、男に向かって声をかける。さっさと出ていってしまった。 「はあ、もう。ご馳走様」  リータは溜息を吐いて、コインをテーブルに置くと、彼らを追い駆けた。
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