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「そこの注意書き、見なかったのね」
女の子に言われ、どうにか動かせる顔を向けた。
立て看板があった。
『この山は
人間を狩ってしまいます。
立ち寄らないよう
ご注意願います』
「狩る?なんだそれ」
「紅葉がどうして赤い部分があるか、それは何故か知ってる?」
「なにを、ぎゃあああああああああああ!!」
骨の軋む音を全身で聞いた。
「人の血を吸うからよ」
あぁ、そうか、そうだったのか。
「さあ秋の始まりよ」
いっそう締め付けられて意識が薄れ始めた。
僕の血を吸った紅葉は、どれほど赤いのだろうか。
先生をハサミで刺したときの、赤より赤いだろうか。
みんな、せいぜい紅葉狩りを楽しめばいいさ。
僕は上を見上げた。
緑色だった葉が赤く染まっていく。
染まり切るのを見届ける前に意識が途切れた。
――完――
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