紅葉に狩られる

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「そこの注意書き、見なかったのね」 女の子に言われ、どうにか動かせる顔を向けた。 立て看板があった。 『この山は  人間を狩ってしまいます。  立ち寄らないよう  ご注意願います』 「狩る?なんだそれ」 「紅葉がどうして赤い部分があるか、それは何故か知ってる?」 「なにを、ぎゃあああああああああああ!!」 骨の軋む音を全身で聞いた。 「人の血を吸うからよ」 あぁ、そうか、そうだったのか。 「さあ秋の始まりよ」 いっそう締め付けられて意識が薄れ始めた。 僕の血を吸った紅葉は、どれほど赤いのだろうか。 先生をハサミで刺したときの、赤より赤いだろうか。 みんな、せいぜい紅葉狩りを楽しめばいいさ。 僕は上を見上げた。 緑色だった葉が赤く染まっていく。 染まり切るのを見届ける前に意識が途切れた。 ――完――
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加