2.既視感

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 金森さんの洞察力に感心しながら、俺はこっそり自分と津和の違いを照らし合わせていた。俺もはたからみれば、個人主義かって思われても不思議じゃないくらい、人付き合いが悪いというか下手だ。一方、津和は社交的に見えるから、おそらく友人も多いんじゃないかと思う。  タイプが違うのに付き合えるのは、一方が我慢を強いられているからではないか。太田さんと相川さんを見ていると、普通は対照的なタイプ同士は、そううまくいかないのだと気づかされる。 (好きって感情だけじゃ、どうにもならないことって多いもんな)  津和はどうだろうか。実はものすごく我慢してることがあっても、俺の前ではうまく隠しているだけかもしれない。そして、いつかそれが爆発して、手遅れになったりしないだろうか。  付き合ってるからこその、不安なのかもしれない。だがそんな理屈では、この不安は解消されそうにない……もうずっと、いろいろ迷惑かけてる気がしてならない。  飲み会は、会社から少し離れたイタリア料理を出す店だった。プロジェクトリーダーの藤沢さんのオススメだそうで、彼女のイメージどおり、洗練された女性が好みそうだと感心する。 「いやいや、そんなかたくるしい店じゃないから! 洋風居酒屋みたいなものだから、千野さんも気楽に飲み食いしてくださいね? さあさあ、ここに座って」  藤沢さんは気さくに笑って、俺をさりげなく誕生日席に座らせようとしたので、やんわりと断った。 「いえ、その、こういう場は慣れてないので……それに俺、実は飲めないんです」 「あ、そうなんだ。ここソフトドリンクもおいしいから、飲めなくても全く問題ないですよ!」  藤沢さんは無理強いせず、自ら誕生日席に着いた。そして率先して他のメンバーにも声をかけて、飲み物の注文を取ってくれる。料理はコースらしく、すでに決まってるようだ。段取りが半端なく鮮やかで、ふと大学時代の飲み会を思い出した。  どこでも仕切りがうまい人間がいて、裏方に徹しているのに存在感がある。だが藤沢さんはにぎやかな性格でもあって、飲みの席でもかなり目立っていた。
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