序章 始まりの旅

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序章 始まりの旅

   次の者に託するが為、我が経験を此処に記す。 零、桜が過去と未来を繋ぐ。抗って変わる過去もなければ、抗わずして繋がる未来もなし。 一、桜の花びらを入れたる酒を飲めば、異界と結ぶなり。帰るにも同じく。 二、酒盃にくむ量は眠りの深さに応ず。すり切りの一盃にて四半世紀なり。昼の酒は未来を、夜の酒は過去をあらわすなり。 三、見ゆる世界は五年毎なり。故に一匁の単位にて変わることなし。されども、現世に帰らんとすれば、極めて同じ量と為せよ。 四、異界においては時は経たず、されども現世においては経つなり。 五、桜を中心として、半径およそ一里のみにてあり。つねに昼なるは、桜の根元のみなり。あとはつねに夜なれば、足下を警ぐべし。 六、異界の酒は限りあり。飲み過ぎに心せよ。たちまちに帰らざるなり。理由同じく、現世の酒は飲み干すべからず。  
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