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 慌てて逃げる石本、飯田。  装甲車の如き重厚さながら、ものすごい勢いで2人に迫るやまあらし。彼らの背中へ頭からぶつかっていく。そして顔を振り上げた。  2人の体が高く跳ね飛ばされた。赤い血が飛び散る。牙で斬り裂いたのだ。  ドサドサッ!  地面に落ちた石本と飯田は、すでに残骸と化していた。命はおそらく、空中で消えていたのだろう。   私たちも襲われるの?  背筋が凍る真緒。  しかし、やまあらしはそのまま動かなくなった。  「結衣っ!」  声がした。尊だ。こちらに駆けてきて、真緒と筧の(いまし)めをといてくれた。  「良かった。無事だったんだね」  尊に抱きつく結衣。  一転して静かになった山中に、ザッザッと厳かな足音が聞こえてくる。  やまあらしが去って行くところだった。瓜坊がチョロチョロと続いていく。  ありがとう、やまあらし……。  真緒、尊と結衣、そして筧も、その後ろ姿が闇に消えるまで見送っていた。                                                           了
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