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湿り気をおびた風が木々を揺らした。
晴れていれば緑輝く森林であるが、雲の多い今日はむしろ薄暗い。一人で山深くまで続く道を歩きながら、須山尊は心細さに一瞬身震いした。
首を振って気持ちを持ち直す。
誰が帰るもんか、あんな家……。
母に叱られたのは昨夜、些細なことだった。小学校でのちょっとした喧嘩だ。そして今朝、よりによって土曜日に「しばらくゲーム禁止」と言い渡されたので、反発して家を飛び出したのだ。
ここは尊の住む導西村の奥、塔洞山の麓付近になる。高い山々が連なっている浜見山塊の一部だ。
ん?
ふと、道の脇、草木が途切れ落ちくぼんだ箇所に目がいった。何か動いている。
そっと近づいて覗いてみると、ビニール袋や紐などがたくさん捨てられており、絡まった小動物が何匹かいた。
うわっ! リスに野ねずみに、瓜坊(猪の子)やテンまでいる!
珍しくはなく、この山に入ればたまに出会う動物達だ。しかし、人の気配があると逃げていくので、このように間近で見る機会はあまりない。
かわいそうに、出られなくなったんだな。すぐ助けてやるからな。
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