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「実際に、やまあらしと呼ばれる何らかの生き物はいるんでしょうか?」
進むうちに、筧の歩調に慣れてきた。真緒が歩きながら訊くと、筧は即座に頷く。
「いるよ。かなり前だが、何人かが手を出して逆襲に遭って死んだ」
「ああ、確かにその話は聞きましたが……」
顔を顰める真緒。
10年ほど前、狩猟期間外に鹿や猪を狩ろうとした密猟者達が、遺体で見つかったことがあった。胴体に残る大きな傷痕、粉々に破壊された骨などから、かなり大きな生き物の仕業だと推察される。とはいえ、遺体が他の動物に喰われてもいたので、詳しいことはわからなかった。
以前から、山中に見たこともないような大きな何かがいた、黄金色に輝く毛むくじゃらの生き物を見た、猟銃で撃ったが剛毛に弾丸を跳ね返されたので慌てて逃げた、等という話があった。
「本州にヒグマはいないから、ツキノワグマの中で巨大化した個体とか考えられませんか?」
「いや、あれは熊じゃない」
真緒の問いに即座に首を振る筧。
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