宮廷魔術師

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 ひとしきり泣いて、けろっとしたダイアナが、青年を見た。 「ねえ、あなた誰? 見ない顔ね」  ダイアナが、訊いた。 「申し遅れました。私、最近になって陛下に召し抱えられました、宮廷魔術師のアクトと申します」 「魔術師?」  ダイアナが、目を輝かせる。 「魔術が使えるの? さっき浮いていたのは魔術なの?」 「はい」 「ねえ、魔術をおしえて」 「姫様?」  侍女が困惑する。  アクトは、困った様に微笑む。 「姫殿下は変わった方ですね。今どき魔術を習いたい人はそういませんよ」  近年、ルダリア王国は平和な時代にあった。それ故に、宮廷魔術師の価値は戦争全盛期に比べれば、格段に下がっていた。   「でも、魔術が使えれば、さっきのあなたみたいに人助けができるでしょ」  ダイアナが言った。  アクトは、微笑む。 「ではもう少し、大人になったら」 「その時は教えてくれる?」 「教えます」  ダイアナは、弾けるような笑顔を見せた。 「約束よ」    二人は互いの小指を絡ませて、約束した。
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