宮廷”雑用係”

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「先生! 何でもかんでも引き受けないで下さい! 授業に差し支えます!」  ダイアナは、侍女と共に寝込んでいるアクトの見舞いに来て、思わず苦言を呈した。  アクトは、よろよろと起き上がる。 「申し訳ありません。わざわざ見舞いにまで来て頂いて」 「もう、寝てていいから!」 「はあ」  アクトは大人しく横になった。まだ顔色が悪かった。  侍女が、持って来た薬をテーブルに置く。 「医師からの追加の薬です。足りない様であれば、お使い下さいと」 「ああ、これはかたじけない」  ダイアナは、もどかしく思う。 「魔術でぱっと治せないの?」 「姫殿下、魔術はぱっと使うものではありませんよ。教えたでしょう?」 「……人外の力を使うから、むやみに使うな、でしょ?」 「覚えておいででしたね。使い過ぎると術師の身体に障ります。こんな平和な時代に魔術の使い過ぎで体壊したら本末転倒ですよ」 「まあ、それはそうね」  ダイアナは、ベッド横に置いてあった椅子に座った。髭面でぼさぼさ頭のアクトを見て、愛しく微笑む。 「先生、良い男が台無しですよ」  ダイアナが、アクトの頭に手を伸ばした。アクトは慌てて言う。 「姫殿下、御手が汚れます」 「そんなことないわ」 「姫様。お父上に言いつけますよ」  侍女が強めに制した。  ダイアナの手が止まった。  ダイアナは、寂し気に顔を曇らせると、そっと呟く。 「今度は一人で来ないと。先生のお世話も出来ないわ」  聞き取ったアクトは、困った様に微笑む。 「姫殿下、お立場を」 「冗談よ」  ダイアナは、立ち上がると、むっとして言った。 「早く良くなって下さい。先生」 「善処します」 「お大事に」  ダイアナは、潔く帰って行った。  
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