政略結婚

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政略結婚

「お父様、話があります」  ダイアナは、国王の執務室に入るなり言った。  国王は、窓際の執務机で書類に目を通していた。ダイアナの姿を認めて、止めきれずに部屋に入れてしまった衛兵に大丈夫だ、と目配せした。  国王は、椅子の背にもたれると、ダイアナを見た。 「こちらも話がある」 「え?」 「お前には、何人かの婚約者候補がいたが、このたび隣国のアクトレシア王国の王子に決まった」 「えっ?!」  ダイアナは、あまりの衝撃に目を見開いた。  国王は、厳めしい顔でダイアナを見る。 「どうした」 「い……いえ」  ダイアナの顔から血の気が引く。父に言おうとしていた事の全てが頭から吹き飛んだ。 「ひと月後に顔合わせだ」 「そんな……」 「お前には、我が国の平和を維持する義務がある。これ以上の我儘は許さぬ」  ダイアナは、静かに奥歯を噛み締めた。溢れてくる涙を堪えるのがやっとで、もう何も言えなかった。  ダイアナは、無言で頭を下げると、執務室を出て行った。    
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