もう一度

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もう一度

 ダイアナは、少しもアクトを忘れることが出来ずに、婚約者との顔合わせの日を迎えた。  国境付近の国王の別邸で両家の両親と婚約者同士が会う。  ダイアナは、相手の両親と挨拶をしたが、王子はいなかった。到着が遅れているという事だったが、怒りもなく何とも思わなかった。  何処にいても何をしていても、心に浮かぶのは永遠に失ってしまったあの優しい笑顔だけ。もうどうでも良かった。 「私たちは隣の部屋で話をするから、お前はここで王子の到着を待っていなさい」  父王は当然の様にそう言って、ダイアナを応接室に残した。  ダイアナは、微かに違和感を感じつつも何も考えなかった。ぼうっとソファに座り、王子の到着を待っていた。    暫くして、応接室の扉が開いた。 「遅くなりまして、申し訳ありません」  その声を聞いて、ダイアナは目を見開いた。  そこに立っていたのは、宮廷魔術師のアクトだった。  
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