もう一度

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「アクト……?」 「姫……ダイアナ」  アクトは、以前と変わらずに微笑んで、ダイアナに歩み寄った。  ダイアナは、呆然とアクトを見上げる。ソファからゆっくりと立ち上がった。 「な、ぜ、ここに?」 「婚約者なので」 「は?」 「私は、アクトレイシアの王子です」  ダイアナは、あまりの展開に何も言えない。 「来たな」  父王が入って来た。 「陛下」 「お父様、これは一体どういうことなの?」 「サンフルーツだ」 「え?」 「以前、アクトが料理の試食をして体調を崩したことがあったろう」 「はい」 「サンフルーツが使われていたのだ。あれは私達が食べても何も問題がないがアクトレイシアの者が食べると高熱を出したり腹痛を起こしたりする。新任の料理長だったから間違いが起きた。料理長が報告を上げて、それで気が付いた。アクトが、行方不明になっていたアクトレイシアの王子であると」  当時17歳のアクトは既に魔術師だった。森での狩りの最中、猛獣に襲われ家臣たちを守る為に力を使い果たした。そして崖から転落し行方が分からなくなっていた。  ルダリア王国領内で保護されたアクトは、一命を取り留めたものの、記憶を失っていた。だが魔術師としての力が残っており、国王は、召し抱えの大義名分が立つとしてアクトを引き取った。   「それが分かったのは、お前に結婚の話をした後だった」 「どうして教えてくれなかったのですか?」  アクトが、代わりに答えた。 「私が、本国に戻って、後継者として受け入れてもらえるか、分からなかったからです。ですが、こうして間に合いました」  ダイアナは、飛び付く様にしてアクトを抱き締めた。  アクトも、ダイアナを抱き締めた。 「すまない。悲しい思いをさせて」  ダイアナは、腕をほどくとアクトを見た。  涙を溜めた目で、微笑んで、もう一度言う。 「結婚して下さい」 「勿論」  アクトは微笑んで、ダイアナの唇にキスをした。
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