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   人気のない埠頭に恐らく永遠に止まない海風。背の高い彼の頭を両手で掴んで引き寄せて、長いキスをした。  誰とでもするようなキスじゃない。  互いの心に溶け込むような酷く甘いキスの後に彼は言った。 「ごめんなさい。来月帰ります」  唖然とした。こんなに俺の心を揺さぶっておいて! 「そんなの絶対に許さない」  こっちは本気だ。なのに、彼はまだ笑っていた。 「嬉しいです。許さないで」  じゃないよ! こっちは何も嬉しくない。こうなりゃヤケだ。抱きしめ合いながらの止まらないキスに全身が反応した。 「これが幸せ?」  彼が暢気に聞いてきたから、 「知らない」 「僕は今、分かった」  ありきたりの幸福はここにはなくて、ほんの少しの愛がある。掛け合わさって、これから大きくなる。  これはとても特別な純粋な感情。 「会いに行くから、待っていて」  どちらともなく口にした言葉で愛を図る。    こちとらファーストキスですけれど。    
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