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後日、その男と同じ駅でまた会った。その駅はバイト先のカフェのある駅。改札で擦れ違った。
「ハロー」と五回は繰り返しながら、彼は足音を立てて追いかけてきた。人混みでのヨーロピアンとの追いかけっこはだいぶ目立った。こちらは友人と一緒。改札を出てまでついて来た彼に引き止められて、友人と共に呆然としていると、
「また会えましたね。良かったです。一度ちゃんと御礼を言いたかったんです。少し話しませんか。今は暇ですか。これから一緒にご飯を食べませんか」
「あーー……」
焦げ茶色の癖っ毛、透き通った海のように青い目、圧倒される大きな体。ステレオタイプな陽キャ外国人だった。心の中でははっきり言ってしまおう。関わりたくない。
「今からバイトなので」
離れようとしたところを肩を掴まれ、耳元で言われた。
「待って。ねぇ、そちらは彼女ですか」
「違います。ゼミの友達」
「ゼミ」
俺の肩を掴んでいた手を見て、勝手に吃驚していた。
女のように俺の体が細いとでも言いたいのだろう、どうせ。
片腕で捻り潰されそうな体格差は如何ともし難い。男として負けている気がする。ジム行って体を鍛えたり、プロテイン飲んだりちょっと頑張ったところで目の前の人間に敵う気はしない。張り合ったところで無意味。
なんて思っていたらその男、俺にだけ聞こえる声で、
「僕は君と話がしたいです」
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