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吃驚して彼に振り向いたら、その口元がニヤついていた。人の良さそうな顔して悪い男だ。生来の気の弱さから拒否出来ない性分なのを見透かされていた。
「友達になりませんか」
この距離感は既に友達以上だろうが。
海外では男が男を口説くのは普通なのか? どうせいつか自分の国に帰るのだろう。それまでの遊びだろう?
遊ばれてなるものか!
「すみませんがごめんなさいです」
振り払って逃亡。人混みを掻き分ける。友達はついて来た。
「ちょっと、今の人、誰」
「知らないガイジン」
「紹介してよ。カッコ良かった」
「知らないから」
「知らないって感じじゃなかった」
息を切らせながら二人で雑踏を駆け抜けるのだった。この子はこの子で、俺のバイト先のカフェで勉強したいと訳の分からないことを言ってついて来ている。働きたくはないと言う。働かざる者食うべからず。
ゼミの他の女子と上手く行ってないらしい。寂しいんだと。
あの男も寂しいのか? だからこんな通りすがりの俺に構う? そうか。分かった。
全員、他を当たれ!
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