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望まなくとも奇縁は続く。彼が働く会社近くのカフェでバイトしていると知られてからは怒涛の如く距離を縮めてこられた。
「何度も話しかけようとしたんです」
それから彼は英語でひとりごち、
「また会えました。いやぁ、とっても嬉しいです」
「………」
もうそういうのやめてくんないかな。とハッキリは言えず黙っていると。
「今日、仕事の後、食事に行きませんか」
「明日提出しないといけないレポートがあって」
「では、明日の夜は大丈夫ですね」
「うーん? 明日の夜は?」
イントネーションが妙な日本語につられた。
「大丈夫ですね? じゃあ、待ち合わせしましょう。連絡を取りたいです。IDください」
「今、仕事中です」
「ちょっと待って。今、ここで書きます。待ってくださいね。待って……。はい、これが僕の電話番号です。是非是非登録してください」
そして満面の笑みで強引に提供された数字の羅列。
有り得ない。ペーパーナプキンに書かれた番号を見て唖然。こんなの誰が望んだんだ。
人から聞けば羨ましく思える国際交流なんて上辺だけで、国際法の授業はほぼ毎回寝てる。英語? 何それ美味しいの?
メッセージアプリでやり取り。ローマ字で書いてくるから読めるけど、モデルみたいな外見して一大学生に拘る理由は何。
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