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 自分の言葉が通じてないんじゃないか、と思いながら話すなんてストレス溜まるから。 「俺、帰ります」 「突然どうして? 食べ物が勿体無いですよ。心配しないでください。全部僕が払います。僕が誘ったんだから。はっはっは」  彼は高らかに笑うのであった。金のないカフェバイトの大学生にコース料理なんて払わせないよって言ってくれてる? うるさいなっ。  運ばれてきた美味しそうな前菜を見て席に着いた。 「気に入ったんですね。良かったです。期待? 期待した?」 「こういうのは期待とは言いません」 「それでは何と言うんですか」 「これは」  これは。何と答えたら良い。目の前の青い目の男は俺の言葉を待ってニコニコしている。  こちとらガイジン対応仕様じゃない。思案しながらフォークで突き刺したそれを口に運べば、自然と口から出てきた。 「食欲です」
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