11人が本棚に入れています
本棚に追加
「しょくよく。それはどういう意味ですか?」
「食べたいってことです」
「ははぁ、なるほど。教えてくれてどうも有難う」
口の中にはもう何もない。ふと手元のコースメニューを見たら全部英語で書かれていた。俺は今、何を食べたんだ? 美味過ぎて一気に食べてしまった!
その後はコミュ力高めで話上手な男と言葉を埋め合った。
意外と普通に話せた。共通の話題は映画と音楽。
二時間は向かい合って話したわけだが、男の事は結局出身地すら分からずじまいだった。
店から出た。
「楽しかった。また会いましょう」
俺も、とは口が裂けても言えなくて、ちょっと呆然としていたところ、どさくさ紛れにチークキスをされた。知ってるぞ、これは誰にでもするもんじゃないだろう!
それから、駅までの道を示された。彼は大通りへ歩いていくつもりのようだ。
「じゃ、また」
頬(少し濡れてた!)を手の甲で擦りながら、彼の後ろ姿を見送った。
――期待?
しないから!
最初のコメントを投稿しよう!