2

2/7
前へ
/12ページ
次へ
「しょくよく。それはどういう意味ですか?」 「食べたいってことです」 「ははぁ、なるほど。教えてくれてどうも有難う」  口の中にはもう何もない。ふと手元のコースメニューを見たら全部英語で書かれていた。俺は今、何を食べたんだ? 美味過ぎて一気に食べてしまった!  その後はコミュ力高めで話上手な男と言葉を埋め合った。  意外と普通に話せた。共通の話題は映画と音楽。  二時間は向かい合って話したわけだが、男の事は結局出身地すら分からずじまいだった。  店から出た。 「楽しかった。また会いましょう」  俺も、とは口が裂けても言えなくて、ちょっと呆然としていたところ、どさくさ紛れにチークキスをされた。知ってるぞ、これは誰にでもするもんじゃないだろう!  それから、駅までの道を示された。彼は大通りへ歩いていくつもりのようだ。 「じゃ、また」  頬(少し濡れてた!)を手の甲で擦りながら、彼の後ろ姿を見送った。  ――期待?  しないから!  
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加