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5
マサトは、小さなレストランの扉を押し開けた。
父親がカウンターの向こうへ入っていく姿が見えた。店には客はいない。店内には変わらず、父の好きな七十年代の洋楽がかかっていた。
マサトは、緊張を抑えながら、カウンター席に座る。
父は水を出そうとして、驚いた顔で一瞬マサトを見つめた。
「何しに来た」
その声には、昔は感じられなかった老いが感じられた。
「親父、話がある」
とマサトは息を呑んで、言葉に力を込めた。
「聞くことはない」
と父は即答し、 水を置いてカウンターの外に出ると、追い出そうとマサトの腕を掴んだ。
「どうしても聞いてほしい。俺の時間はもう尽きてしまうんだ」
マサトはできる限り冷静に訴えた。
その言葉に、父は一瞬、手を止めた。
「何だと?」
父の手が震え、 その眼がマサトの表情をしっかりと見つめる。
マサトもまた、父を見つめ返した。
「父さんに、どうしても伝えたいことがあるんだ」
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