烏は世界を何色に見る

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「もう一回! もう一回!」  クラスの中心、もとい世界の中心で生きていると信じて止まない奴ら数人が周りを囲い、主犯格を調子よく煽る。  ガタイのいい野球部男子に背後から両腕を掴まれた。と同時に、眼鏡が床に落ちる。中学生といい、体格があまりにも違うため、上手く抵抗できない。 「白石(しらいし)、もう一回!」背後から発せられる声変わりしたての声が鼓膜を震わせた。 「えぇ、もう一回? 欲しがるなぁ」白石は野球のピッチャーの構えをし、ラップに包まれたおにぎりを投げた。  投げつけられたおにぎりは見事右目に当たり、ポトリと床に落ちた。鈍い音が一つ。 「ごめん、顔に当てちゃった」白石は笑いながらこちらを覗き込んだ。バデライトのような瞳がくっきりとした二重で守られている。 「やめてください、白石さん」消え入るような声で負けじと訴える。 「安易に名前呼ばないでくれる?」この名前はヒナタのものだから、と白石は続けた。  人気の恋愛ドラマに出演していたアイドルの名前を嬉々として口にする白石を見て、この世は見た目至上主義なのだと、子供ながらに悟った。
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