烏は世界を何色に見る

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「私のこと、何でも聞いてくれる喋るアクセサリーとでも思ってるんでしょ?」  落ち着いた雰囲気のイタリアンバルで、突如女性の尖り声が響き渡った。 「(あおい)、いきなりどうしたの?」朱音は顔を見上げ、恐る恐る弁明する。「友達だと思ってるよ」  彼氏の相談をするために、同じ会社で働いていた元同僚と三ヶ月ぶりに飲みに来ていた。先日の真の行動を『再配達が多くてイライラしていた』と結論づけ、今度は葵の彼氏についての相談を受けていた最中のことだった。 「じゃあなんで私が彼氏の相談をしてるのにスマホばっかり見てた? 目を見て聞いてくれなかった?」  隣の席のカップルがこちらに目をやり、口元を隠しながら視線を合わせる。 「ねぇ、やめようよ。みんな見てるよ」忍び笑いをするカップルを横目で捉えつつ、朱音は気恥ずかしさを紛らわすために左手の人差し指でイヤリングを触る。 「周りのことは気にするのに私のことはこれっぽっちも気に掛けてくれないんだね。お店で怒鳴ってる人と一緒にいる姿を見られるのが恥ずかしいから『やめよう』って言ってるだけでしょ?」葵は抑揚をつけ、一気にまくし立てた。  テーブルに並ぶサラダやピザ、生ハムの盛り合わせが、気まずそうに静寂を保っている。
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