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「今の彼氏もイケメンだから別れたくないんでしょ? あんたは出会ってからずぅーっとそう。自分が良ければそれでいいんだよね。私もあんたの彼氏も、あんたを着飾るためのアクセサリーじゃないんだよ。そんなんだからあんたは⋯⋯」葵は一瞬、言葉を飲み込み、深く息を吸った。「彼氏にイライラをぶつけられるんだよ。暴力されるんだよ。今までは同じ職場だったから仲良くしてたけど、もう私は転職したから」
葵は最後に「あんたはもう私の人生には必要ない」と吐き捨て、勢いよく立ち上がる。財布を出し、テーブルに千円札を三枚叩きつけた。ワイングラスに入った白ワインが揺れる。
「待って」朱音はテーブル越しに葵の腕を掴んだ。
「触らないで!」葵は噛みつくような表情で朱音の腕を振り払う。「こういう時に立とうとしないで、今もイヤリングばっか触ってる」
葵は朱音の顔を力強く指差した。
「イヤリング似合う私可愛い〜なんて思ってるんでしょ? あんたは私のことどう見てるのか知らないけど、私にとってあんたはもう過去の人間でしかないんだよ」
朱音はテーブルの下で掌を固く握っていたことを自覚する。
葵は何も切り出さない朱音を見つめ、その目を滲ませた。
「さようなら」涙ぐんだ彼女は語尾を微かに震わせ、背中を向けて店から出ていった。
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