烏は世界を何色に見る

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 店内が一瞬静まり返り、またポツポツと会話が再開される。  朱音は舌打ちをして、まだ五切れも残っているピザを一気に二切れ口に放り込み、悔しさと共に白ワインで流し込んだ。  会計後、店を出た朱音はレンガ造りの壁を蹴る。不平を吐き捨てながら帰路につき、真と半同棲をしているアパートへ帰った。 「真、聞いてー」玄関ドアを開けた瞬間、朱音はリビングでテレビを観る真に声をかけた。「さっき元同僚と飲んでたんだけど、マジで最悪だった」  酔ってよろける朱音を横目に、真はテレビを無言で観続ける。 「何なんだよあのブス。ブスのくせに調子乗んなよ。あーイライラする」ハーフアップを留めていたバンスクリップを外し、長い髪を掻いた。「ごめん真、水ちょうだい?」  真はヌルッと立ち上がってキッチンへ向かい、ガラスコップに水を入れて持ってきた。それをリビングのローテーブルに置き、部屋の隅のチェストに何かを探しに行く。  「ありがとう」と受け取ろうとした途端、視界の端からアクリル絵具を二本持った分厚い手が侵入してきた。青と黄色の絵具がヌルヌルとコップの水へ沈む。複雑な動きで混ざりゆく二色を混沌とした脳で見届けた後、真の凛とした顔を見る。
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