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真はその顔をにやけさせ、緑色に変化したガラスコップを朱音に押し付けた。
「これ飲めよ」そう言って、真は朱音の呆気にとられた顔を凝視した。「お前の顔も大概じゃねぇか。なんだその顔、酒で浮腫んでるぞ。さっさと洗えよ」
貶し言葉を浴びた衝撃が起因し、戸惑いや憂い、疚しさなど様々な感情が錯綜した。脳の神経が複雑に絡み合い、口を上手く開くことができない。
真は棒立ちの朱音を素通りし、洗面台の前に立つ。栓を閉め、蛇口をひねってボウルに水を溜める。ゆったりとした足取りで朱音の元へ戻ってその腕を掴み、強引に洗面台の前まで連れてくる。
「痛いよ、真」
棘のある口振りにも、真は聞き耳を持たない。次の瞬間、うなじを鷲掴みにされ、洗面台に溜まった水に顔を沈められた。
息を吸う間もなく、息苦しさの泡を水中に散乱させた。耳に出入りする水面の音、テレビのナレーション。そして、60秒からカウントダウンする真の沈着した声。
数字が減っていくに伴い、段々と意識が遠のいていく。2、1、0。襟首を掴まれ、勢いよく顔を引き上げられた。
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