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どのくらいの時間が経ったのだろうか。深呼吸をして落ち着いた身体に、コンコンという音が耳に入る。音の方向を見やると、窓ガラスの向こう側で烏がこちらを見つめていた。
駆け寄って烏を見つめる。指の関節でコンコンと窓ガラスを叩き、烏に話しかけた。
「君の漢字の由来知ってるよ。他の鳥よりも目の位置が分かりづらいからって、目の部分の横棒を取られたんだよね」
烏が首を傾げる。黒曜石のように輝く純粋無垢な瞳に吸い込まれるような感覚に陥った。
「人間って自分勝手だよね。でも知ってるよ、君は神の目を持ってるって」先日の理科の授業で先生が語っていたことを思い出す。「君は紫外線が見えるんだよね」
烏は人間には見れない色を見ることができる。この世界は烏の目にどう映っているのだろうか。否応なしに侵入するこの醜い世界に、色彩豊かな絵具が塗り重ねられているのだろうか。
「羨ましいよ。いつか世界を君みたいに見られたらな」
烏はどこかへ羽ばたいて行った。
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