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「これでも察しないって、いじめてた側が忘れるというのは本当なんだね」
真はチェストの一番下の引き出しから分厚い本を取り出してきた。本のカバーを外し、ローテーブルに無造作に置く。それは、朱音が通っていた中学の卒業アルバムだった。
「まさか、中学一緒?」朱音は丸くした目を真に向けた。
真は感情を殺したような表情でページを捲る。『三年二組』その見開きの中央に『白石朱音』、すぐ右下には『野口真』の文字と顔写真があった。
「ノロ⋯⋯」朱音が口に手を当て、真を爪先から頭まで舐めるように見つめる。
「僕は一瞬も忘れたことがないよ。今でも青と黄色が分からないし、水に顔をつけるのが怖い」
真は霧がかかった目でアルバムを見つめ、落ち着いた口調で語り始めた。
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