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頭を押さえつけられ、プールの中に無理やり顔を沈められる。50秒、49秒。冷たい。30秒、29秒。息が苦しい。10秒、9秒。プールの水を盛大に飲んでしまう。
ゼロという声と同時に顔を上げられた。いつもの面々がスクール水着の姿で周りを囲んでいた。水を飲んだ反動で咳が止まらない。
「これ、お前には要らんだろ」カケルがゴーグルと水泳帽をむしり取り、裏の空き地に投げ込む。
「ノロマ、泳げないもんねぇ」白石が腹をよじって笑った。「最後もう一回、60秒しようよマー君」
「しゃーないな、あと一回な」マー君と呼ばれたサッカー部の男子が近付き、力任せに顔を沈める。
息を吸う時間がなく、今度はすぐに水を飲んでしまった。このまま60秒間耐えなければならない。瞼の裏の暗闇で、脳裏を真っ白にして苦しさを紛らわす。
2、1、0。顔を上げられた瞬間、ガガガと喉が鳴り、肺に空気が一斉に入る。心臓が激しく胸を打ち、脳をも震わせる。
「顔おもろ」
白石の甲高い笑い声が脳天を貫いた。
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