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あれから約一年が経った。
俺は今、東京の片隅にある小さなラジオ局で働いている。
新卒で入った大手商社を半年で辞めて、このラジオ局に入社した。
最初はアルバイトとして何とか入れてもらった。
どんな仕事でも全力で頑張った。
その甲斐あって、三ヶ月ほどで正式な局員として認められた。
今でも局内では下っ端だが、ラジオ番組の制作の一部を任されたりもしている。
これからも経験を積んで、着実に力を付けていきたい。
そしていつか、プロデューサーとなって自分で番組を作れるようになりたい。
いや、なってみせる。
俺には夢がある。
『セーブデータの深夜公園』をもう一度、自分の手で復活させるという夢が。
その為に、周囲の反対を押し切ってこのラジオ局に入ったのだ。
昼も夜も無いし、上司は厳しいし、給料は低いし、タレントは我儘な人が多いし……大変なことばかりだけど、それ以上に心が充実していた。セーブデータの二人が最後に言った「またいつか」を俺が実現する──その思いが、心を前向きにさせてくれる。
そしてこの夢を叶えた暁に、俺は『セーブデータの深夜公園』の最終回を聴こうと思う。
録音したまま、聴けずにいる最終回を。
俺の中で、あの番組はあと一回を残したままずっと続いているのだ。
「またいつか」が来るその日まで。
さあ、夢の実現へ向けて今日も頑張るぞ!
(終)
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