「またいつか」のその日まで

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「……」  時計の針が深夜三時を超える。  今頃、番組は終了していることだろう。  俺はラジオの録音ボタンを停止した。  そしてパソコンでSNSを開く。  セーブデータのファン達が番組の終了を思い思いに嘆いていた。  彼らのコメントから察するに、番組は本当に最後までいつも通りだったらしい。  しんみりした様子は一ミリも無くて、笑いながら終わったようだ。  唯一、いつもと違うのは最後の締めの掛け声だった。  ずっと西部による「また来週〜」だったのが、最終回は二人で声を揃えての「またいつか」だった。  それを受けて、リスナーたちも番組終了を悲しみつつ、「今までありがとう」「本当に楽しかった」「またいつか、絶対に帰ってこいよ!」……等、そんな前向きなコメントで溢れていた。  俺は傍観者としてひたすら見ているだけだったが、胸から喉に込み上げてくるものを感じた。  ……そう。俺は傍観者だ。  最後の放送を聞かなかったから。  聞けなかった。  聞いてしまったら本当に終わってしまうと思った。  それが怖くて、聞けなかった。勇気が無かった。  俺は、番組の終了を覚悟していたわけじゃなかった。  心が、その現実を受け入れてなかったんだ。 「……」  ファン達による『セーブデータの深夜公園』へのコメントはいつまでも続いている。  俺は、SNSの画面を閉じてパソコンの電源を落とした。  明日も仕事だ。少しでも睡眠を取らないと……
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