【完結】お父さまの彼氏🩵

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あたしには、この世にどうしても苦手なものが二つある。 それは、、。 まだあたしが幼い頃、離婚した父親と、歯医者だ。 あたしにとっては、どちらも名前を聞いただけで震えがくるほど怖いものなのだ。 父親のことは、幼い頃別れたきりなのだが、よく覚えている。 とにかく、怖い人だった。 大きな会社を若くして経営していて、整った顔立ちの背が高い人だったが、とにかく冷たくて躾に厳しい人だった。 手をあげられたことはなかったものの、挨拶の仕方から食事の作法まで、事細かに言われた。 お父さんではなく、お父さま、と呼ばされていた。 結局、両親は離婚したが、その理由はあたしに対する躾の方針の違いだと、長年思っていたが、どうも違っていたらしい、、。 他に何か重大な理由があったようだ。 それを知ったのは、優しかったお母さんが、突然、事故死した高校入学式の日の翌日だった。 お母さんのお葬式の会場に、いきなりでっかい黒塗りのベンツが横付けされた。 そして、その車から、黒いスーツをモデルのように完璧に着こなした中年の背の高い男の人が出て来た。 幼い頃、別れたっきりのお父さん、、いや、お父さまだった。 あまり変わっていなかったので、すぐに分かった。 冷たく整い過ぎた顔が、昔の厳しさをすぐに思い出させた。 あたしは、お母さんが突然いなくなって悲しいよりも、お父さまの出現が恐ろしかった。 しかし! ベンツから続けて、女性かと見紛うような綺麗なほっそりした男の人が出て来たので驚いた。 もしかして、お父さまの会社の秘書の人とかだろうか、、。 そう思って、見つめていたら、お父さまが、あたしに向かって冷たく言った。 「春菜、今日から、私たちと暮らしなさい。こちらは、私の、、」 お父さまの次の言葉であたしは、恐怖と驚きで固まってしまった。 お父さまは、その綺麗な男の人を示して、続けて言った。 「私の恋人で歯科医をしている美園貴志さんだ」 はああああっ?! ぬあんだって?! 恋人が男で、しかも、あたしの大っ嫌いな歯医者だってえーーー!!!
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