【完結】お父さまの彼氏🩵

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泣いているあたしに、美園さんが言った。 「はい! 治療は終わり!」 「えっ?」 いつの間にか、虫歯の治療は終わり、全然痛くなくなっていた。 「あ、ありがとうございました!」 あたしは、ニコニコしている美園さんにそうお礼を言った。 こんなに怖くない歯医者は初めてだ。 あたしは、美園さんがしているこの冗談みたいな『たか歯科』で、虫歯の治療と共に、心の傷も治してもらったのだった、、。 それから、お父さまの高級マンションに美園さんと一緒に帰った。 お父さまが出迎えてくれた。 心配そうな顔をして、あたしに言った。 「春菜、大丈夫だったか?」 あたしは、笑顔で答えた。 「はい! お父さん! 大丈夫です!」 あたしがそう答えると、お父さんは驚いた。 そのお父さんに、あたしは手を差し出した。 そして、言った。 「お父さん、でも、怖い歯医者を頑張ったご褒美に、手を繋いで下さい」 「えっ、、」 お父さんは、驚いた。 そのお父さんにあたしは告げた。 「お父さん、あたしもずっとお父さんのことが大好きでした。だから、手を繋ぎたいです!」 お父さんの、ずっと冷たかった表情が崩れた。 「春菜、、」 お父さんは、涙を流しながら、あたしが差し出した手をおずおずと握った。 初めて繋いだお父さんの手は、大きくて暖かかった。 美園さんが、にこやかにそんなあたしたちを見守っていた、、。 あたしは、こうして、ずっとこの世で苦手だった、お父さんと歯医者を好きになったのだった。 end
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