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もう退散してくれたのむから
彼女のために人間がつくった『幽霊』の偶像と自分の脳のイメージとなってしまっている本来なら存在していないはずの『妄想』がこうして彼女の後ろにいると思い込む病気をなんとしてでもカメラにうつして祓ってやる。
かといって廃墟やら昔は自殺の名所と言われた場所を彼女に内緒かつひとりで探索して許可とってなんて十九歳にやらせるなよと思いつつもそこまでしてでも彼女と今後過ごすことは当たり前のことではないのでなんとしてでも解決させたかった。
彼女の後ろの幽霊が本物だとしてもそれは別のモンスターとかそういった別分野だ。
圭人は圭人の行動で彼女の後ろにいると思わされている自分自身の病気をなおすため、走り続ける。
さりげなく聞いた彼女が行ったという廃墟や観光スポットをめぐってカメラで撮影した写真や動画には同じ幽霊は存在していなかった。
あとは彼女のうしろを撮るだけだ!
長いあいだデートをすっぽかしたことになってしまって彼女を楽しませられなかったからホテルで軽くストレス発散をし、SNSアップ用の写真を撮影。
これであの霊がうつってさえいれば!!
しかしもうあの霊はいなかった。
心霊写真なんて今どき金をかけて作らないと無理。
そう考えながら顔をしかめていると彼女が心配いたので何もなかったとだけ伝えて十九歳ならではのホテル遊びを楽しむ。
*それから
もう何か変なものが見えることはなくなった。
カメラには特に『幽霊』もいなくて虫や暗い倉庫、散歩している老人や森だとかそういうものばかりで思い出にもならなかった。
彼女の後ろにいたものは存在しておらず、ただの圭人の病気でしかなかった。
それでも圭人はいまだにカメラを持ってあちこちの暗い場所やいわくつきの場所を撮影している。
もちろん彼女にも友達にも内緒だ。
闘病記録とホラー映画撮影は似ている・・・のかもしれない。
この好奇心は後遺症だ。
それでもこのことは彼女が関心を持ってくれるまで話すことはしないだろう。
見えなくていいものが見えなくなったあとの日常は当然じゃないことを十九歳で知って安心できたのだから。
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