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「まっ!おい、菅沼さん危ないって」
「まてまて」
小さくも叫びに似た声で男子生徒一人が星依の腕を掴んだ。もう一人も首を横に振り必死に止める。
ひらりとスカートを翻し、星依は腕を掴んだ男ににっこり微笑むと自分を掴む男の手に自分の手を重ね優しく握った。
「放してくれる?」
「へ?あ、……すんません」
当初の目的を忘れ、男はつい手を放してしまった。周りの者達も何も言えず黙り込む。
星依はまたにっこり微笑んで教室を睨む千晴の元へ向かった。
「……チッ」
近づいてきた星依に千晴は舌打ちをした。
星依の意志が強そうな二重の目がまっすぐ千晴を見上げている。
それだけで千晴の鼓動は速まり、頬はあっという間に真っ赤に染め上がった。
――格好悪ぃ
そう思って千晴は威嚇するように周りを睨むと何も言わずスタスタ歩き始めた。片手にはガサゴソとビニール袋がぶらさがっている。
星依はそんな千晴に何も言わず、弁当袋を両手で持ちながら千晴の数歩後ろを静かについて行った。
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