参加者募ってクイズの時間 〜白銀の成熟〜

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参加者募ってクイズの時間 〜白銀の成熟〜

 シルバーウィーク最終日の朝、争奪戦前に落ち着きを取り戻すべく、紅葉のように紅く透き通った紅茶を()れて(たしな)んでいた。(すす)り終えたカップをテーブルにゆっくりと置き、スマホを取り出し、指定されたアプリ『ツイックス』を起動すると、アイン・フォン争奪イベントの開催告知が流れてきた。その動画欄をタップすると、全画面表示になった。そして突如、康斗CEOが現れた。 「参加者募って〜クイズのじか〜ん!」  会見発表の重々しく(かしこ)まった感じではなく、明るくフランクな口調だ。CEOの背景も白銀から紅葉へと変化しているように感じた。メディア毎に背景を変えて魅せていくとは流石は康斗。その様は秋の短く(はかな)い風の流れに上手く身を任せて魅せる一流エンターテイナーのよう。 「アッポロイド社アイン・フォン争奪イベント進行役の家門康斗です。皆様にはツイックスを使ってクイズに参加していただきます。弊社のアカウント『アッポロイド社』もフォローしておいて下さい。今からアイン・フォンに関するクイズを出題。正解者の中から抽選で1名の方に、最新アッポロイド製品一式をプレゼント。では参りましょう。クイズはこちらっ!」 BGMが変わり、内容が発表される。 「『最近この私、家門康斗がアイン・フォンを使用して凹んだ出来事があります。それは何でしょうか?』 繰り返します。 『最近この私、家門康斗がアイン・フォンを使用して凹んだ出来事があります。それは何でしょうか?』 これからアイン・フォンのテーマソングを2曲お届けします。その間に、ツイックスで回答をツイットして下さい。付けるハッシュタグは『#アイン・フォンQ』です。よろしいですか? 正解以外にも康斗推し回答には1名の方にアイン・フォン限定カラー『オータム・ホワイトシルバー』を差し上げます。2曲目直前に正解に関するヒントもお伝えします。アイン・フォン争奪戦クイズ開始イィィッ!」  1曲目が流れ、終了する。そして、再び康斗が現れた。 「1曲目は『アッポロイドシンガース』の『アイン・フォン is No.1』でした〜。 さて、問題は『最近この私、家門康斗がアイン・フォンを使用して凹んだ出来事があります。それは何でしょうか?』です。ツイットを沢山頂きました。では、康斗推し回答を見ていきましょう。 まずは、ツイックスネーム『和ませる魔法使いはたぶん組の長』さんの回答です。最近この私、家門康斗がアイン・フォンを使用して凹んだ出来事があります。それは何でしょうか?」 『通販で買った小説の表紙が汚れていた』 「パフッパフッ」    回答を読み終わった後にラッパの効果音がなった。 (アイン・フォン関係ねーだろw) 「確かに汚れてたらちょっと凹みますけど、そういう事じゃないですね〜。それにアイン・フォン関係ないですから。それともアイン・フォンで買った小説って事かな? でも、違いますよ〜。『表紙が汚れていた』ではごさいません。どんどんいきましょう。 ツイックスネーム『殺文(さつぶん)(あやつ)る世紀末の(りゅう)(だぬき)』さんの回答です。最近、家門康斗がアイン・フォンを使用して凹んだ出来事があります。それは何でしょうか?」 『入力した文章が物騒な表現になる』 「パフッパフッ」 (怖い怖いw) 「怖い怖い。夜使ってたら眠れなくなりますよ。でもそういった事を書きたい人にはいいですよね〜。でも、違いますよ〜。どんどんいきましょう。 ツイックスネーム『居酒屋大将系酒ライター・ケギン@フリマでも居酒屋やりたい』さんの回答です。最近この私、家門康斗がアイン・フォンを使用して凹んだ出来事があります。それは何でしょうか?」 『アイン・フォンが酒を飲めない』 「パフッパフッ」 (飲めるかw) 「飲めんよ飲めん! 飲ますな。アイン・フォンは酒は飲めん。人間だったら飲めるんですけどね〜。違いますよ〜。 はい次行きましょー。ツイックスネーム『食通芸なら白猫と刑事@次は京の都』さんの回答です。最近、家門康斗がアイン・フォンを使用して凹んだ出来事があります。それは何でしょうか?」 『グラノーラの味が変わった』 「パフッパフッ」 (変わるかw) 「それはご本人の勘違い。それか最近流行りのステルスなんちゃらってやつ……ステルス味変えだったかな……。アイン・フォンに味を変える機能はないです。変えれたら最高なんですけどね〜。小さい時これがあったらどんだけ重宝したか。違いますよ〜。『味が変わった』ではございません。 さぁ次行きましょう。ツイックスネーム『十八番禁止のFM102(エフエムヂュウビー)』さんの回答です。最近、家門康斗がアイン・フォンを使用して凹んだ出来事があります。それは何でしょうか?」 『天井からタライが降ってきてアイン・フォンに直撃』 「パフッパフッ」 (んなアホなw) 「天井からタライが降ってきてアイン・フォンにガッシャーン……ってド◯フじゃないんだから! そんなところでアイン・フォンは使いません。違いますね〜。 それからこの人あれだ……。弊社のお問い合わせフォームにいっつもド◯フネタ送ってくる人だ。フォームでド◯フネタ禁止してまして、この人すんごい覚えてる。なんかもう覚えた。えっと102(ヂュウビー)さんは争奪戦でもド◯フ禁止。はい、違いま〜す。 次行きま〜す。ツイックスネーム『マイコォ&ジェイソン@フォーリン・マッソー・トレーナーズ』さんの回答です。最近、家門康斗がアイン・フォンを使用して凹んだ出来事があります。それは何でしょうか?」 『ヘイ! ツトーム! アイン・フォンが大きくナリマセーン』 「パフッパフッ」 (なるかw) 「ならんならん。なったら完全にホラーだよ。この人えらいテンション高ぇな。ツイットでテンション高くしても答えは一緒ですから。ほんでツトームって誰だよ? 私はヤスートですから! 間違えないで下さいね。ノーツトームでお願いしますよ。でも、大きくなるとしたらやっぱり筋トレしてなるのかな?って違います! アイン・フォンを使ってってそういう事じゃないですから。 次行きます。ツイックスネーム『物ふけりシッコクス』さんの回答です。最近、家門康斗がアイン・フォンを使用して凹んだ出来事があります。それは何でしょうか?」 『アイン・フォンを使い過ぎて集中力が落ちる』 「パフッパフッ」 (アイン・フォン以外でもなるってw) 「それはアイン・フォン以外でも使い過ぎたらそうなります。違いますね〜。 さぁ次行きましょう。ツイックスネーム『帰ってきた細川はたぶん真貴男』さんの回答です」 (よしっ、俺のが来たっ!) 「最近この私、家門康斗がアイン・フォンを使用して凹んだ出来事があります。それは何でしょうか?」 『AIに人が変わったと指摘された』 「パッパラパッパッパー! パフッパフッ! パフッパフッ!」 当たりなのか、一段と豪勢な効果音が鳴り響いた。 「これは凹むわ〜。AIにまで人が変わったって言われたらさ……。しかもシャクレ声で言われるから余計に……。 え〜、ツイックスネーム『帰ってきた細川はたぶん真貴男』さんにはアイン・フォン限定カラー『オータム・ホワイトシルバー』を差し上げま〜す」 (よしっ! 限定カラーゲット!) 思わず、嬉しくなりガッツポーズをする。 「違います! ヒントは、AIからいつも悪口を言われるんですね〜。『いつも、ホニャヤロウと言われる』です」  そして、2曲目が流れ、終了し、ゴングの効果音が流れる。 「カンカンカンカンカンカン!」 「アイン・フォン争奪イベントクイズ終了! 2曲目は『アンチアッポロイドシンガース』で『それでもアイン・フォン?』でした〜。 では問題を振り返りましょう。『最近この私、家門康斗がアイン・フォンを使用して凹んだ出来事があります。それは何でしょうか?』。 ヒントを出しました。 悪口、『いつも、ホニャヤロウと言われる』まで言えばもうわかりますよね?  『いつも、アチチポットやろうと言われる』 これは……何の誘い? 悪口じゃないよね?www では答えを発表します!」 「ジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャン!」 「正解は、 『いつも、バカヤロウと言われる』 でした〜。 いや〜この仕様早くなんとかしたいんですよね〜。」 (わかってるなら直してから出せよ) 「来年はなんとかします。正解率上がりまして、最新アッポロイド製品一式の当選者は、 ツイックスネーム『出臼 牧』(でうす まき)さん。漢字で『出るに臼の牧場の牧』で『デウス マキ』さん。 おめでとうございま〜す。この後、出臼牧さん宛にDMを送りますので、アッポロイドアカウントをフォローしておいて下さい。来年も恐らくやります。皆様のご参加お待ちしております!」  争奪戦クイズイベントは盛大に盛り上がり、幕を閉じた。その後、アッポロイドからDMが送られてきた。 「この度はアイン・フォン限定カラー『オータム・ホワイトシルバー』のご当選おめでとうございます。当選品を発送致しますので、必要事項をご入力下さいませ。」 (早速来たか!)  ワクワクする気持ちを抑え、入力作業に入る。そして、送信完了。すると、暫くして家の呼び鈴が鳴った。 「ピンポーン」 「はーい」 「お届けものです」 (なんだろう?)  ドアを開け、荷物を受け取る。そして箱にはこう記されていた。 『AIN・FONE English Only ver.』 (はやっ!? それでEnglish Onlyってどういう事? 英語しか対応してないのかよ!? ひとまず電源を入れてみるか)  箱を開け、電源を入れると、画面が白銀に灯り、メッセージが記された。 「Dakara-Ima-Isogashii-Dayo!」  英語だが、よーく見覚えのある言葉を見て、眠れる怒りが瞬く間に蘇ってきた。そして、そのメッセージが表示されて暫くしてから光が消え、電源が入らなくなってしまった。 「康斗ー! 早くなんとかしろー!」 心からの悲痛の叫びが白銀の空間の中を鈍くこだました。
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