自販機にて、青春を飲む

　あと一回しか、『当たり』は出ないらしい、という噂が流れたその日から、高校にふたつある自動販売機は、昼休みに長蛇の列ができる。

　ただの自販機に、数十人の生徒が並んでいる。
　今この瞬間も、あたしの後ろの列は伸び続けていた……あと十分で昼休みは終わるけど、今から並んだ子たち、授業に間に合うかな。

　別に、特別なラインナップの自販機じゃない。コンビニでもスーパーでもどこでも見かける水やお茶、炭酸飲料やスポーツドリンクが販売されている。

　だけど、この自販機は当たるんだ――ごくまれに、『特別な飲み物』が当たるんだ。