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あくまで紳士的な振る舞いに見えるように、ジャクリーン嬢を見つめる。
私の顔を見て、急にしおらしくなるジャックリーン嬢。
この貼り付けた笑顔に気づかないのか。
明らかに嘘くさい微笑みなのに。
まぁ、彼女程度に気づかれるようなら、王族など務まらないがな。
「アーサー様が、そこまでおっしゃるのなら……失礼しますわ」
私を、引き留めようと伸ばしかけた手を、今度はゆっくりと手の甲を見せる状態で私へと差し出す。
何も気づかないふりをして、言葉だけで挨拶を交わして、その場を立ち去る。
例え挨拶だとしても、彼女の手に触れるなどごめんだ。
そろそろ立ち去ったか。
振り向いて、ジャックリーン嬢の後ろ姿を観察する。
不貞腐れたジャクリーン嬢は、こんなはずじゃないわ、と周囲に八つ当たりしながら去って行った。
やはりな
ジャクリーン嬢が何か仕掛けてくることは、予想済みだ。
わざと紅茶をこぼして、室内で2人きりになりたかったのだろうが。
既成事実でも作ろうと思ったか……詰めが甘いな
はぁ、次はレイチェル嬢か。
「皆、すまない。すぐに片付けて新しい物を用意してくれ」
私はまた先程の席へと腰掛ける。
この場所からは、庭園の入り口までよく見える。
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