16アーサー視点✖️ジャクリーン嬢

4/4
前へ
/103ページ
次へ
あくまで紳士的な振る舞いに見えるように、ジャクリーン嬢を見つめる。 私の顔を見て、急にしおらしくなるジャックリーン嬢。 この貼り付けた笑顔に気づかないのか。 明らかに嘘くさい微笑みなのに。 まぁ、彼女程度に気づかれるようなら、王族など務まらないがな。 「アーサー様が、そこまでおっしゃるのなら……失礼しますわ」 私を、引き留めようと伸ばしかけた手を、今度はゆっくりと手の甲を見せる状態で私へと差し出す。 何も気づかないふりをして、言葉だけで挨拶を交わして、その場を立ち去る。 例え挨拶だとしても、彼女の手に触れるなどごめんだ。 そろそろ立ち去ったか。 振り向いて、ジャックリーン嬢の後ろ姿を観察する。 不貞腐れたジャクリーン嬢は、こんなはずじゃないわ、と周囲に八つ当たりしながら去って行った。   やはりな ジャクリーン嬢が何か仕掛けてくることは、予想済みだ。 わざと紅茶をこぼして、室内で2人きりになりたかったのだろうが。 既成事実でも作ろうと思ったか……詰めが甘いな はぁ、次はレイチェル嬢か。 「皆、すまない。すぐに片付けて新しい物を用意してくれ」 私はまた先程の席へと腰掛ける。   この場所からは、庭園の入り口までよく見える。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

366人が本棚に入れています
本棚に追加