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「では、次期王妃さまの素質はひとまず置いておいて、友人としてアドバイスを。
マリーベルさまのことをお好きなら、素直にありのままのお気持ちを、お伝えしたらよろしいではないですか。」
「そ、それはっ」
「もしかして、こわいのですか?」
「な、何も、怖がってなどいない! マ、マリーベルは、私の婚約者だ」
「婚約者候補ですわ」
「それは建前であって、婚約者はマリーベル以外考えられない!」
「まぁ、随分と横暴ですのね。
マリーベル様のお気持ちを考えたことはありまして?
果たしてマリーベルさまは、アーサー様と同じお気持ちでしょうか?
まさか、圧力をかけているのではないでしょうね?」
咎めるミシェル嬢に何も言い返せない。
彼女とは、昔からお互い素で話しあえる仲だ。
「マリーベルの気持ちだと?
マーティン侯爵に軽く根回しはしたことは白状するが、圧力をかけた覚えはない」
「ふふ。 あの侯爵様を味方につけていますのね。 マリーベル様に拒否権はないも同然。
恋愛結婚よりも、政略結婚が主流ですものね。」
「━━つもりはない」
「なんとおっしゃいまして?」
「愛のない生活は耐えられない!」
「まぁ、ふふふ。でも、一方的な気持ちは、相手を苦しめることにもなりますのよ。
アーサー様は、マリーベル様を苦しめたいのですか?」
「マリーベルを苦しめるなど、そんなつもりはない! ミシェル、私はどうしたらいい?」
「人の恋愛に介入するものではないのだけど……
マリーベル様のお気持ちを確認しましょう。ご心配いりません。
ふふふ、なんだか面白いから、私がマリーベル様にお尋ねしますわ」
「ミシェル嬢が?」
天使のようなマリーベルが、毒されないだろうか。
「大丈夫ですわ。私にお任せください。
そのかわり、アーサーさまの望む答えでなかった場合も、現実を受け止めてくださいませね?
それと、この事はアーサー様への貸し と致しますので、きちんと返してくださいませね?ふふ」
「…分かった。まぁいいだろう。
マリーベル嬢を、くれぐれもそなたの毒で侵すことのないようにな。」
「毒だなんて。アーサー様ほどではないでしょうに。では、失礼しますわ」
ミシェル嬢は悪戯を考える子供のように楽しそうに帰って行った。
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