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19
マリーベルの部屋の前に来ると、ニコライは立ち止まり後方へ声を発する。
「そうでした、ビル殿。今朝方、このように花が置かれていたのですよ。マリーベル様個人を狙ったと思われますが、犯人の手がかりがないか調査を頼んでも? ついでに片付けてくださると助かります」
そーっと手の隙間から、ニコライ様越しに見ると、ビル様と騎士達が佇んでいた。
思わずビクッとしながら、ニコライ様の胸に隠れる。
全く気づかなかった。
もしかして、ずっと後ろからついてきていたの?
それとも、急いで追いかけてきたのかしら。
え? ということは、この状態を皆にずっと見られていたということ……
ど、ど、ど、どうしましょう
恥ずかしいわっ、
でも、そんなことよりもニコライ様にまで迷惑がかかってしまう。
ニコライはビルに声をかけた後、マリーベルが落ちないよう抱え直して扉を開けた。
ビルは、騎士達に何か指示をだしていた。
扉が閉まる直前に、ビルは滑り込むように入室する。
「マリーベルさま、ベッドに横になられますか?」
ニコライはマリーベルを、ベッドの側まで運ぶ。
「あ、あの、ニコライさま、大丈夫です。良ければソファーにお願いします。」
「横にならなくて大丈夫ですか? それでは、ソファーにお運びしますね。」
ニコライはマリーベルをそっとソファーへと降ろした。
「ありがとうございます、ニコライさま」
マリーベルは、火照った顔を見られないように、俯きがちに答える。
そんなマリーベルを心配そうに覗き込むニコライ。
「まだ、お顔が赤いですね。やはり、少し横になられては。」
大丈夫ですとマリーベルは首を横にふる。
近いですっ、近いです、ニコライさま。
ニコライ様と物理的にもう少し距離を置けば、
自然と元の顔色に戻りますから。
冷ややかな視線を向けるビルは、痺れを切らす。
「マリーベルさまも大丈夫とおっしゃっています。いい加減離れてくださいニコライ殿」
こ、こ、こわいです、ビルさま、そんなきつい言い方をされなくてもっ。
ですが、離れてほしい私の気持ちを代弁してくださったのは助かります。
「お、お二人ともどうぞおかけになってください」
ニコライ様は私の隣に、ビル様は向かいのソファーへと腰掛けた。
相変わらず近い距離に落ち着かない。
マリーベルは、異性と隣り合わせで座ることは初めてだった。
「あの、何のおもてなしもできなくて申し訳ありません。」
この部屋には、紅茶もティーカップもない。
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