19

1/3
前へ
/103ページ
次へ

19

マリーベルの部屋の前に来ると、ニコライは立ち止まり後方へ声を発する。 「そうでした、ビル殿。今朝方、このように花が置かれていたのですよ。マリーベル様個人を狙ったと思われますが、犯人の手がかりがないか調査を頼んでも? ついでに片付けてくださると助かります」 そーっと手の隙間から、ニコライ様越しに見ると、ビル様と騎士達が佇んでいた。 思わずビクッとしながら、ニコライ様の胸に隠れる。 全く気づかなかった。 もしかして、ずっと後ろからついてきていたの? それとも、急いで追いかけてきたのかしら。 え? ということは、この状態を皆にずっと見られていたということ…… ど、ど、ど、どうしましょう 恥ずかしいわっ、 でも、そんなことよりもニコライ様にまで迷惑がかかってしまう。 ニコライはビルに声をかけた後、マリーベルが落ちないよう抱え直して扉を開けた。 ビルは、騎士達に何か指示をだしていた。 扉が閉まる直前に、ビルは滑り込むように入室する。 「マリーベルさま、ベッドに横になられますか?」 ニコライはマリーベルを、ベッドの側まで運ぶ。 「あ、あの、ニコライさま、大丈夫です。良ければソファーにお願いします。」 「横にならなくて大丈夫ですか? それでは、ソファーにお運びしますね。」 ニコライはマリーベルをそっとソファーへと降ろした。 「ありがとうございます、ニコライさま」 マリーベルは、火照った顔を見られないように、俯きがちに答える。 そんなマリーベルを心配そうに覗き込むニコライ。 「まだ、お顔が赤いですね。やはり、少し横になられては。」 大丈夫ですとマリーベルは首を横にふる。 近いですっ、近いです、ニコライさま。 ニコライ様と物理的にもう少し距離を置けば、 自然と元の顔色に戻りますから。 冷ややかな視線を向けるビルは、痺れを切らす。 「マリーベルさまも大丈夫とおっしゃっています。いい加減離れてくださいニコライ殿」 こ、こ、こわいです、ビルさま、そんなきつい言い方をされなくてもっ。 ですが、離れてほしい私の気持ちを代弁してくださったのは助かります。 「お、お二人ともどうぞおかけになってください」 ニコライ様は私の隣に、ビル様は向かいのソファーへと腰掛けた。 相変わらず近い距離に落ち着かない。 マリーベルは、異性と隣り合わせで座ることは初めてだった。 「あの、何のおもてなしもできなくて申し訳ありません。」 この部屋には、紅茶もティーカップもない。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

367人が本棚に入れています
本棚に追加