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「マリーベル様、直接こうしてお話しするのは初めてですね。改めまして、アーサー様の補佐官を勤めておりますビルと申します。」 ビルは座ったまま軽く一礼する。 濃いブラウンの髪色で、肩まで届く髪を後ろに一つで束ねており、落ち着いた雰囲気を醸し出している。   「ご丁寧にありがとうございます。以前、アーサー様とご一緒の時に、お会いしましたわね。その節はご挨拶できませんで…」 アーサー様とのお茶会の際には、たいていビル様と入れ違いに入室することが多い。 眼鏡の奥から覗く瞳は、全てを見透かしているようで、笑っていない目がアーサー様とは違った意味で怖いわ。 何も悪いことはしていないのだけれど、妙に緊張してしまう。 「マリーベル様が、私のことを認識してくださっているのは意外でした。」 「えっ?」 いけない。咄嗟に声に出してしまったわ。 「いえ、失礼。良い意味ですので、お気になさらず」 ビル様は、私の記憶力が悪いことをご存知なのね。 「マリーベル様はアーサー様と個人的に交流がおありなのですか?」 会話の内容を疑問に感じたニコライが問いかける。
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