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周囲の花は見るも無惨に刈り取られていた。 あんなに綺麗に咲いていたのに…… いったい誰がこんなひどいことを。 女神像を見上げると、手と耳の部分に損傷が見られる。 「なんてことを……宝石を奪っていったのね……」 慈しむように女神像に手で触れる。 目立つ大きな宝石を奪っていったのね。 もう一度改めて女神像を見上げたマリーベルは、 その姿に心を痛める。 でも、今の女神像の姿の方が、昨日見た時よりも スッキリしている気がする。 不謹慎だけれど、 あんなに大きな宝石がぶら下がっていた耳よりも、ゴテゴテとした宝石の花束を持っていた手よりも。 そうだわ。 「せめて、女神様、これをどうぞ」 マリーベルは、周囲に散らばっていた花をかき集て、女神像の手に供える。 その様子を黙って見つめる騎士の存在を忘れて。 それにしても、こんなに硬い像をこのように損傷させるなんて、余程切れ味のいいものを使われたのね。 早く修復されるといいわね。 でも… 多少煌びやかな部分もあるけれど、 あまり大きな装飾もない、今の状態の方がいいのではないかしら。 なんて、神殿の方に失礼になるわね。 立ち去ろうとした時、護衛の方と目が合う。 その表情には後悔の色が現れている。 気になったマリーベルは、「どうかしたの?」 と声をかける。 「━━胸が、痛く……、いえ、何でもありません!」 ビシッと敬礼するように姿勢を正して、語尾を強調する。 痛い? 大丈夫かしら… それ以上言葉を交わせる雰囲気ではなかったので、気になりつつも、マリーベルはその場を後にした。 執務室にたどり着くと、昨日と同じく皆書類作業に追われていた。 ニコライ様がいないかと探していると、すぐにこちらに気づいてくれた。 「マリーベル様。護衛の方をお連れしていますね。 安心いたしました。 先程部屋へ伺ったのですが。ちょうど入れ違いになったのでしょうね。 本日より体験の予定でしたが、昨夜のこともありこの通りバタバタしていまして。 基本的には、お祈りを捧げたり、奉仕活動として孤児院へ訪問などあるのですが…… 本日は、私も手が放せず。良ければ、こちらを見学でもされますか?」
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