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ニコライ様は、嫌な顔をせずに簡単に計算の仕方を教えてくれた。 それだけでなく、私にできそうな作業を任せてくださった。 ニコライ様に教わると、不思議なほどすんなりと頭に入ってくる。 「ニコライ様の説明は、とても分かりやすいですわ。ありがとうございます。これなら、私にもできそうですわ」 「そう言っていただけると、教えがいがありますね。 マリーベル様もいずれご結婚されて、女主人として邸内のことをされると思いますので、良い経験になるとおもいますよ。」 「そう……ですわね。」 結婚か。 アーサー様の怖いお顔が浮かんでしまったわ。 手が震えそうになるのを、必死にごまかしながら、真剣に書類と向き合う。 今は、この作業に集中しましょう。 黙々と作業を続けていると、あっという間に時が過ぎていた。 こんなに大勢の人達と一緒の部屋にいても、 隣にニコライ様がいてくださるだけで、どこかホッとする。 あんなに気恥ずかしく思っていたのに。 一緒に書類作業を行うことで、連帯感というか親近感を覚えるわ。なんだか不思議。 こんなに何かに没頭したことなんて、あったかしら。 それは、初めて経験するとても充実した時間だった。
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