24

1/3
前へ
/103ページ
次へ

24

「おはようございます。本日も宜しくお願いします。」 「マリーベル様。」 「おはようございます」 あれから毎日、簡単な計算作業を続けている。      この部屋で作業する人達とも、顔見知りになった。 名前と顔はまだ一致しないけれど、挨拶や簡単な世間話ができるくらいの仲にはなれた。 まだまだ人前で話すことは苦手だけれど、 全く交流のしてこなかった自分にとっては、大きな進歩だ。 そのおかげで、苦手な計算がほんの少し分かるようになってきていた。 足したり引いたりなど、簡単なことは分かるのだけれど、何割や比率などが全くダメで。 ニコライ様は計算のことだけではなく、 私が尋ねた事に対して、快く答えてくださる。 一般常識の範囲なのだろうけれど、知らなかったことを知るというのは、楽しい。 学ぶことが楽しいと思えるなんて、信じられない。 ニコライ様は、教師としての資質があるのではないかしら。 素晴らしい才能を持ち合わせているのね。 色々なことを教わったわ。 例えば、この国にある4つの侯爵家のこと━━恥ずかしながら、自分の家名しか知らなかったわ。   領地での特産物や発掘物、農作物のこと。 潤っている領地と、そうでない領地との現状について。 国内や隣国の簡単な情勢なども。ニコライ様の博識に驚かされるわ。 記憶力が悪くて、まだ全部は覚えきらなくて、 こっそりメモをとったりするけれど。 この私がメモをとる姿を見たら、エレナは何て言うかしら。 神殿内にある図書室での、自由に閲覧できる許可もくださったわ。 あとは、貴族の子女として、出来て当然と思われている刺繍も全くしたことなくて……。 今までチャリティーバザーなどでは、きっとアンが刺繍したものを、私の名前で出していたのね。 ほんとに何もできないわ、私。 どうして、お父様達からお叱りも受けなかったのかしら。 どう考えても、こんな私を受け入れてくれる嫁ぎ先などあるはずがないわ。 ましてやアーサー様の婚約者だなんて、論外でしょうに。   刺繍に関しては、近いうちに指導してれる方を紹介してくださるそうだ。 ニコライ様は心当たりがあるとおっしゃっていたわ。 こういう時に、人脈が役に立つのね。 自分ではできないことでも、誰かの協力を得て解決したりできる。 ニコライ様は、知り合って間もない私に、親身になってお力になってくださる。 本当にお優しい方だわ。 私も、いつか、ニコライ様のお役に立てるかしら。 もっと、色々と努力したら、その時には……。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

362人が本棚に入れています
本棚に追加