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ニコライはミシェルを見送った後、マリーベルの側に戻ってくる。
「マリーベル様、本日は、私の妹ミシェルが、刺繍の基礎を教えてくれます。
見た目と中身に多少ズレがありますが、淑女としては完璧だと思いますので、ご心配なさらず。
ミシェルが到着する前にお話すべきでした━━
マリーベル様、少し私の個人的なことを聞いてくださいますか?
少し歩きましょう」
ニコライは真っ直ぐにマリーベルを見つめる。
その瞳には寂しげな影が宿っていた。
「えぇ」
マリーベルは相槌をうつと、ニコライと共に歩き出す。
個人的なこととは何かしら。
私達の後ろからは、
エドワードが付いて来ていた。フレッドかもしれないけれど。
神殿内には複数の庭園がある。ちらほら散歩している方もいる。
私達は、何も言葉を交わすことなく、庭園の一角にあるベンチへと腰をおろした。
そこはちょうど日陰になっており、そよそよとふく風が心地よい。
「━━━マリーベル様、先程の妹の発言で気づかれたと思いますが、私はカーギル家の者です。
正確には、そうだった、と言うべきかもしれません。」
真摯な姿勢で語り始めたニコライに、マリーベルは、言葉を挟むことなく耳を傾ける。
「私は……庶子なのです。」
「っ!」
ニコライ様が、庶子?
ということは、つまり━━━?
どういうことなのでしょう、恥ずかしながら、言葉の意味を知りません。
お尋ねしてもよいのでしょうか……今は質問を挟むタイミングではないでしょうか……
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