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部屋に戻ると、私は先程ミシェル様に教えていただいた刺繍の続きをすることにした。 「いたっ」 また、刺してしまったわ。 地味に痛いのよね。 「マリーベル様」 この声は、ニコライ様だわ。 私は急いで扉へと駆け寄る。 「マリーベル様、少しお邪魔してもよろしいですか?」 「えぇ、どうぞ。」 私は、刺繍を刺していたソファーへとニコライ様を誘う。 やりかけの刺繍を見て、ニコライは軽く微笑む。 「ニコライ様、ミシェル様をご紹介してくださりありがとうございました。おかげで何とか刺繍をがんばれそうですわ。」 作成途中の布を持ち上げて、ニコライ様へと見せるために掲げる。 すると、ニコライ様は私の手を掴んで、指を凝視する。 「あ、あ、あの、ニコライ様?」 突然ニコライに指を掴まれたことに、驚きと同様を隠せないマリーベル。 「マリーベル様、怪我をされたのですね。少々お待ちを」 ニコライは、おもむろに立ち上がると、 「洗面所に置いてあるものを、お借りします」と、洗面所に向かい手に小さな箱を持って戻ってきた。 「各部屋の洗面所には、怪我をした時に使える包帯などご用意しております。マリーベル様、失礼いたします。」 ニコライはマリーベルのケガをした指に、器用に包帯を巻いていく。 「ニコライ様! あの、ちょっと針で刺しただけですので。包帯は大袈裟では?」 ほんの小さな指の怪我にも関わらず、ニコライ様が気遣ってくれて嬉しくもあり、手を触れられる気恥ずかしさもあり、オロオロしてしまう。
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