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「マリーベル様、傷口を軽く考えてはいけません。はい、これで大丈夫ですよ。」   ニコライは包帯を巻き終えると、包帯の上にちゅっと口づけを落とす。 マリーベルの瞳を見つめながら。 熱を帯びたニコライの瞳に見つめられ、マリーベルは混乱して変な声を出す。 「ひゃ⁉︎」 「フフ、早く治りますように、という軽いおまじないですよ」 妖艶な笑みを浮かべるニコライに魅入られて、マリーベルは、動くことさえかなわない。 ポッと顔が一気に朱色に染まる。 ただただ、巻かれた包帯を見つめていた。 「フフ、マリーベルさま、お手をどうぞ下ろされてください」 「は、は、は、はい、あ、ありがとうございます。ニコライ様。」 先程、包帯を巻かれている時に手を差し出した状態のままで止まっていたことに気づき、マリーベルは手を膝の上に戻す。 な、な、何をされたのでしょう、 おまじない? そ、そうでした。 世間では、男性が手の甲に口付けて挨拶するのは普通のことですものね。 家族以外にエスコートされたこともない私には、経験のないことですがっ。 な、何でもないことですよね、 深い意味はない挨拶程度のこと…… そう思うと、なぜか少し チクリと胸が痛んだ。 と、とにかく何か話さなければ。 「あ、そうですわ、ニコライ様。 あの、こちらのハンカチを。 ミシェル様に教わって、初めて刺したものですの。 その、初作品は、ニコライ様に差し上げたくて… あのっ、初めてなので、見た目がお花と分かるかも疑問ですが、良ければ、どうぞ」 私は、刺繍第一号のハンカチをニコライ様へと差し出した。 「これをマリーベル様が私に? そんな記念すべきハンカチを、私が頂いてもよろしいのでしょうか?」 「えぇ!ニコライ様に、ぜひ受け取っていただきたくて。」 「ありがとう」 「!」 ニコライは、感情が抑えきれずにマリーベルを腕の中に抱きしめていた。 「ニコライ様?」 「マリーベル様、すみません……お願いです、しばらく、このままでいることをお許しください。どうか……」 「ニコライ様…」 せつなげに訴えるニコライの声に、マリーベルはニコライを慰めたいと思った。 そっと、ニコライの背中にマリーベルは腕を回す。 ニコライは、更に腕の力を強めてマリーベルを抱きしめる。 「マリーベル様……」 ニコライに応えるようにマリーベルも顔を埋めていた。
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