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どのくらいその状態でいたのだろう。 しばらくすると、ニコライはマリーベルをそっと解放すると、黙って部屋から出て行った。 ふわふわとした気持ちは、パタンと扉の閉まる音が聞こえたのと同時に、一気に正気に戻る。 ドキドキドキと心臓の鼓動が激しく感じられる。 ニコライ様、いったいどうされたの? もっと、抱きしめてほしいと思う、私のこの気持ちは何……。 妙に落ち着かない。 いてもたってもいられず、何か無心になれる作業がしたかった。 私は、刺繍を刺すことにした。 水色とグリーンのハンカチが目に入ったので、 2枚に黙々と刺繍を施した。 始めたばかりにしては、だいぶ見れる出来映えだ。 そして、水色のハンカチをエドワードに、グリーンのハンカチを、フレッドに渡すことにした。 胸ポケットから軽くハンカチが覗くようにお願いして。 これで、ハンカチの色で区別できるわ。 名前を間違える心配もなくなるわね。
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