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本日は無理をお願いして、神殿への滞在期間中にも関わらず王城へと参上した。 アーサー様には事前にお手紙で、面会の約束をお願いしている。 はぁ、久々だわ まさか自分から進んで来る日が訪れるなんて、思いもしなかった。 久々にアンとエレナに会えたのは嬉しいけれど。 それも束の間の喜び。 室内へ侍女の入室許可は、受け入れてもらえない。 「久しぶりだな、マリーベル」 室内で待機していると、アーサーが入室してくる。 相変わらず、眉間に皺を寄せている。 その顔を見た瞬間、身体が硬直する。 氷のような空気が張り詰めていた。 「それで? マリーベル、お前の方から連絡など珍しいこともあるものだな。 ところで……何故なんの断りもなく神殿などへ行った?」 アーサー様は食い入るように見つめてくる。 開口一番の問いが、神殿のこと? やっぱり、伝えておくべきだったのでしょうか…… 「ち、父に、連絡を…お願いしましたが……」 こちらを凝視するアーサー様の視線が痛い。 ダメだわ…やっぱり怖い 「私は、マリーベルの口からなぜ連絡がなかったのかと聞いている。 神殿など、お前が足を入れる場所ではない! マリーベルは、私の側で━━」 「そ、そうやって許可してくださらないと思ったからです! 神殿は、神殿に勤めている方達は素晴らしい方達ですわ」 神殿を遠ざけようとすることに対して、無性に嫌な気持ちになった。 アーサー様の発言を思わず遮るほどに。 マリーベルが自分の発言を遮ったことに対して、アーサーは虚を突かれる。 「━━素晴らしいだと?(ニコライなのか……)」 ドンッといつもの如くテーブルを叩くアーサー。 「ヒィッ」 「アーサー様、テ、テーブルを叩くのはおやめくださいませ」 その怯えた様子を見て、アーサーは言葉を続ける 「マリーベル、お前は、そのままでいい! そうやって……怯えた様子が(かわいい)…… そんなに、神殿に行きたかったのか? なぜ?」 「ア、アーサー様、おっしゃったではないですか。 か、感謝するように、と。神殿で過ごすうちに、 私は、今までの自分の生き方を反省しました。 皆様に感謝する気持ちが芽生えました。 誰かの役に立ちたい、と思える思いやりの気持ちも持ちました。 愛情は……、まだ、よく、分かりませんけれどっ」 「もうその件は良い」 「え?」
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