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「はぁ。最後まで言わないと分からないのか。以前私が言った事だ。もうその件は忘れろ‼︎ そんな事よりも━━」
「どう言うことでしょうか」
少しは認めてくださるかと、一瞬でも思った自分が愚かだった。
結局、アーサー様の言葉に振り回されただけ。
努力したことが、一瞬でなかったことにされた気がして、またも言葉を遮る。
こんな風にはっきりと自分の気持ちを伝えるのは、初めてだ。
「私は、自分の噂を払拭するために神殿へ赴きました。
そこでは、噂など関係なく接してくださる方もいて。
ニコライ様とおっしゃるのですけれど、その方より色々と学ばせていただきまして━━」
「ニコライとはどんな関係だ?」
今度はアーサーがマリーベルの話を遮る。
「え? 二、ニコライ様は、尊敬できる方です。
物覚えの悪い私にも、優しく丁寧に教えてくださいます。
とてもお世話になっている方です。」
「世話に? 随分と慕っているような口ぶりだな?
お前は優しくされると、誰にでも靡くのか?
それとも、ニコライに口説かれでもしたのか?神殿勤めが聞いて呆れるな」
「く、口説かれたりしておりません‼︎」
いくらアーサー様でも、ニコライ様のことを悪く言うのは許せないわ。
私はいつも怯えてばかりだった。
だって怖くて、何も言えなかったから。
でも、このまま何も言わないなんてできない。
ニコライ様は、私なんかとは違う。
とても素晴らしい方だから。
こんな誤解をされたままなのは耐えられない。
マリーベルは、意を決してアーサーを真っ直ぐに向かいあう。
いつもなら椅子の背に寄りかかるくらいに怯えるマリーベルなのに、毅然とした姿に戸惑うアーサー。
「どうした?マリーベル」
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